遠征からシーマンシップを考えてみた
~NCK・algaforest 合同イベント~
2005年3月19日~21日 西伊豆小浦
西表島でシーカヤックを覚えてはや5年。2003年度は本格的に西表島でカヤック修行をし、2004年度はアラスカ遠征を始め、多くのカヤック界の著名人や遠征(Long Distance)経験者と会い話を伺ったことでカヤックの世界がものすごく広がっていった気がする。
今回、その延長というか、極めつけというか、自分がカヤックをする上で一番の目的であり最終的なスタイルだと考える、「カヤックによる長期遠征」についてをテーマにしたイベントがあるということで参加することにした。
これを企画したのが西伊豆松崎にある「西伊豆コースタルカヤックス(NCK)」の村田泰裕氏と三浦半島の「algaforest(アルガフォレスト)」の柴田丈広氏である。二人は元「エコマリン東京」の師弟関係で今回、共同開催でイベントをやるのもかなり久しぶりということであった。カヤックの遠征を考える上では、二人は日本でも屈指のカヤッカーだろう。
柴田さんは高校卒業後単身カナダに渡り、シーカヤックを知ってバンクーバーにあるエコマリンに入り、当時チーフ・インストラクターだったダン・ルイス氏に師事。ノルウェー沿岸3000㎞単独漕破、グリーンランド西海岸でネイティブから本場のカヤックを習い、現在日本のカヤック界を大きく引っ張っている人物ともいえる。
村田さんはカナダ・アラスカ放浪時に東京で開業した「エコマリン東京」の存在を知り、帰国後当時エコマリン東京のチーフインストラクターだった柴田さんに師事。ユーコンで知り合ったこのサイトにもよく出る本郷さんと、後に日本縦断(波照間島~宗谷岬)を行っているほか、単独カナダ、クィーン・シャーロット諸島一周なども成功させている。
昔からカヤックやアウトドアーの雑誌を読んで2人の記事を読んでいた僕としては、一度会って話をして見たいと思っていたし、ちょうど6月から軽く遠征とまではいかなくてもカヤックで旅をしようと考えていたところにこんなイベントがあるというので、かなり早くから予約をしていた。11月の終わりにNCKでカナダのスライドショーを見に行っていたので予約はNCKでおこなったのだった。
■やっぱりそう簡単には漕がしてくれない厄災男A!!
12月にキールフレームが曲がってしまった訳だが、どう考えたって3月19日には修理は間に合うものだ。結局修理不能で新しいフレームを2月の半ばに送ってもらったが、これで安心してしまった僕はモノを確認せず、エアーキャップに包まれたままフレームを放って置いた。
3月の半ば、そろそろ準備をしていこうと思ってフレームを出すと、あることに気付いた。 「ん?」 曲がってしまったエクステンションバー(キールフレームの一部)の残骸と、新しいエクステンションバーがあったのだが、新しいほうと古い方の形が微妙に違うのだ。新しいフレームのオス側が、どうみてもキールのものではなく、チェインの方なのだ! 簡単に言えば、部品を間違って送られていたのである…。
「タノムヨ…カサハラさん…」
残りあとわずかの日数で気付いたのは深夜近い。自分の詰の甘さを再認識しつつ、とりあえずあわてて笠原さんと村田さんにメールし、翌日双方に電話をするとなんとか在庫もあるようで当日には間に合いそうだった。なければ艇をレンタルしなければならなかったので一安心だ。やれやれと胸をなでおろす。
ところがこの油断もいけなかった…。
18日仕事が終わってから荷物を持って品川に行き、そこで一泊してから早朝、東海道本線で熱海まで行き、そこから伊豆急行で下田に向かった。
駅に着くと改札口には柴田さん本人が来ていた。自己紹介、挨拶もそこそこに人数がそろったので集合場所の小浦海岸駐車場に向かう。 駐車場に着くとたくさんの車が駐車していた。30人の参加とは聞いていたが、こりゃーかなりの人数だ。けっこうファルト参加の人も多く、カフナやK-1が確認できた。
時間もあるのでおもむろにカフナを組み立てる。 久しぶりのカヤッキング、しかも大勢の参加で、ウキウキだ。 途中、村田さんがやってきて、笠原さんに送ってもらったエクステンションバーのオス側を受けとる。これで万事解決!枠組みだけ作ったカフナに骨を通す段階になった。
ところがだ…。
あまりの意外な展開に背筋が凍った。
無いのだ。
エクステンションバーのメス側が…。
オス側を受け取ることに意識が集中していたのか、僕が持っているはずのメス側が、どういうわけかバックに入っていない…!! 壊れたフレームを持っていってもしょうがないと、家に置いてきたのだが、それに交じってしまったようなのだ!
「あ、あふぅ…」
一難去って、また一難。そう簡単には安心させてくれない展開になるのは、ホンと、いつものことだ。何でいつも俺はこんなんばかりなのだ??落胆しつつ、村田さんに「…今日は漕げないっす」というと、今からなら舟をとりにいく時間がまだあるという。かーなーり、申し訳なかったが、そうしてもらう。初参加のくせに随分とお騒がせしまくっている…。
意気消沈してカヤックをたたんでいると、お客さんの一人が声をかけてきた。
「どうしたの?出ないの?」
「ハイ…。キールが曲がっちゃって…」
「どこの部分?カフナなら嫁さんのぶんが余っているから使う?」
「はっ?」
あまりにも唐突な、突拍子もない申し立てに、おもわず聞き返してしまった。
この人はカフナとK-1を持ち歩いていて、今回はK-1しか使わないのでカフナの無い部品だけ使えばいいと貸してくれたのだった!
「あ、ありがとうございます!!」
急いで村田さんに電話をし、一件落着。かなりのゴタゴタをうみ、相当な面倒をNCKスタッフにかけてしまったが、かなりの強運でなんとかいつもの愛艇でカヤッキングができる運びとなった。
やれやれ…。
教訓①:修理に出した部品はしっかりとすぐ確認すること
教訓②:事前に忘れ物はないか、再三確認するべし
教訓③:あきらめる前に、まずは人に声をかけてみる
などなど。基本やね。
皆様、申し訳ございませんでした・・・。
■今回のイベントに参加した印象
イベントの具体的な内容などに関しては、さすがに実際に参加した人に申し訳ないので書けないが、昼午後からカヤックを漕ぎ、夜と午前中は宿舎でスライドを見たり、そのスライドの内容に関する遠征についての質問や疑問などを言い、討論したりしあった。
その後、夜遅くになっても熱心に話をする事も多かった。
しかしいかんせん、30人という大所帯。全員と話をすることもできず、多くの言いたいこと、聴きたい事を完全にできたかと言えば、僕はもちろん、他のお客さん、村田さん、柴田さん同じだった様である。
カヤッキングは言葉では表現しずらいことばかりなのだ。
スライドショーはまず、柴田さんの所有しているダン・ルイスやポール・カフィン、ジョン・ダウドの遠征時の写真や、その他カナダのカヤッカーの写真があり、その後村田さんの日本縦断時の遠征写真がスライド上映された。
次の日の午前中は柴田さん自身によるノルウェー沿岸3000㎞の遠征時の写真、グリーンランドでのカヌー界の英雄、ジョン・ピーターソンとのカヤッキングのスライドが上映され、村田さんはクィーン・シャーロット諸島遠征のスライドを上映。その日の夜はイベントに参加したフォトグラファーの西沢あつしさんのカヤッキングのスライドが上映されて、「カヌーライフ」や「OUTDOOR」などで見たこともあるコマーシャル写真が出てきて面白かった。
村田さん、柴田さんには悪いが、さすがプロの写真は違うとお客さんみんな、思ったはずだ…。
最終日の午前中は今年の11月にあると言うビックイベントの為のスライドが上映された。もちろんどういうものだったかはここでは伏せます!すごいことが起きるみたいっすよ…。ぐふふ。
スライドは遠征に出てみなければ見られない景色が写しだされており、現場に行った様な臨場感と、両者の軽快なトークが面白くて気軽に質問などもできる雰囲気が非常に良かった。未公開写真も多く、これを見に来ただけでもかなり満足できる結果だった。
今回のイベントの目的は、柴田氏と村田氏両者のシーカヤックのルーツから始まり、カヤックをやる事、また遠征をする事についてをみんなで考え討論し、シーカヤックというものの話をしていこうと言うのが目的だった様で、多くの人が質問などをし、僕自身も実際ここぞとばかりに話を聞いた。西表島という、ある意味日本の中では特殊な環境でカヤックを覚え、これからカヤックを本格的にやりたいと思っている僕には彼らのカヤックの世界にはいるルーツの話はとても興味深かった。このツアーに参加するまで、僕は個人的な人間関係もあり村田さんにいろいろと話をしてみたいところがあったが、実際に話を多くしていたのは柴田さんだった気がする。
2日目の夜はかなり疲れていたのだが、「シーカヤックの上級者とは何を持って上級者なのか?」みたいな話を5~6人で話が盛り上がり、テクニックや状況判断など、色々な条件での話があってかなり白熱した…というか、為になった。
小豆島で新谷暁生さんと会って「遠征をする意味」みたいなことを話した時(もっぱら聞いてばかりだったけど…)もそうだが、柴田丈広という日本のカヤック界のかなり先端に位置する人物からカヤックについてのあれこれの話を聞けるというのは非常に刺激的で、色々な面で新たな発見があった。 雑誌で見ていた人物と話をすると言う事で、ちょっと緊張もあったが、実際にあって話をしていると全然威張った感じもなく、なんかテクニック至上主義的な感じを受けていたのに、全然そんな感じでもなく、そのカヤックに対する根本的な考え方はやはりカヤックを旅の道具として捉えた王道的な感じを受けた。
ただそれが、これまで僕が知っている直感的なカヤックではなく、根拠や理屈が通った論理的なカヤックであるという点で、少し違っていた。
自分の意見が絶対主義であるという考えは見受けられず、会って間もない事もあるだろうがズガズガと自分の考えを捲くし立てるわけではなくて、人の質問にかなり考えならが言葉を選んで話しているように思えた。んー、でも本当はどんな人なんだろう??もっと話をしてみないと人間はわかりませんからナー。あ、カヤッカーなら漕ぐべきか。
柴田さんや村田さん、そして他のカヤッカーであるお客さんに聞いた話を考えた結果はここでは長くなりそうなので伏せ、そのうち「日々漕想」にでもアップしたいと思います。
柴田さんや村田さん以外にも、多くのカヤックを趣味にしている方々と話ができたのはとても面白く、為にもなった。また、リジットを乗っている人でも何気にフェザーを持っていたりして、ファルトが結構好きな人が多いということもわかった。どうしてもフェザー乗り同士で話があってしまうのだが、全国各地で共通の知り合いがいたり、同じショップのツアーの常連だったりして相も変わらず、この世界の狭さも再認識した次第です。
なんか、最近難い文ばかり書いてたから文体が妙にかたっくるしくなっちまったなぁ~。とにかくいい勉強になりましたし、知り合いも増えて面白かったです!
また機会があれば、おふた方のツアーに参加してみたいです。
でも単独行好きの僕にはやはりあの人数は強烈だ・・・な。